雨のあいだ

梅雨に入って、雨の音をよく聞くようになった。
晴れた日には、予定が入る。どこかへ行き、誰かに会い、何かを片づける。けれど雨の日は、世界のほうが少し立ちどまってくれる。出かける口実がなくなって、家のなかで、することもなく座っている。
退屈だ、とはじめは思う。でもしばらくすると、その退屈のなかから、ふしぎと考えごとが立ちあがってくる。急ぎの用がないから、思考はゆっくりと、遠くまで歩いていける。
退屈は、思考の敵ではない。むしろ、その土壌なのだと思う。雨がやむまで、私はもう少し、この何もしない時間のなかにいる。
随筆の一覧へ